妄想インタビュー|タロウ

2025年4月8日

どうぶつの隠れた本心を覗き見る「どうぶつ妄想インタビュー」。

今回ご登場いただくのは、森で謝罪代行を営む、アライグマのタロウさんです。タロウさんは、3年前に森界で初の謝罪代行業をスタートさせました。

謝罪代行??森で??きっとそう思われる方も多いですよね。私も最初は耳を疑いました。

でも、お話を聞いていけばいくほど、タロウさんが謝罪代行を選んだ理由、そして森の中のリアルが分かってきました。今では、○○や○○を顧客に抱え、大忙しのタロウさん。本日はタロウさんに、自分の得意を見つけ、得意なことで生きていく術を伺いました。

ーまず一番気になるのが、どうして森で謝罪代行なんでしょうか?

そうですよね。理由は2つあって、「欲しがる動物たちが多かったから」と、「向いていたから」です。一度、友人のミチルに頼まれて、本人の代わりに謝りにいったんです。そしたらそれがすごく感謝されて、月に2~3匹から頼まれるようになっていって。で、「これって仕事になるのでは…?」と思い始めたのがきっかけです。

ー向いていたから、というのは?

これは最近分かってきたことなんですけど、僕って、「なんか許しちゃう顔」らしくて。友人が言うには、目の丸みがポイントらしいです。生まれつき元々持っている性質が、謝罪に向いていたんでしょうね。

ー子供の頃から謝ることは多かったんでしょうか?

いえ、僕はなんというか、謝らなくても許してもらえてたんですよね。

シカさんの角を折ってしまったときも、雨の中で足を滑らせたワニさんに大笑いしてしまったときも。相手の怒りを察して黙っていたら、呆れた様子で去っていってくれました。周りからは、「なんて得なヤツなんだ」と思われてたと思います。

ーでもそこから仕事に繋がる訳ですね。

はい。人間界にも謝るシチュエーションってたくさんありますよね。当然同じように、森にもあるんです。そして森に棲む動物たちも、人間と同じ、謝りたくない生き物なんですよね。

ー例えばどんな時に謝りにいくんでしょうか?

直近だと、食事当番をサボったのがバレたから謝ってほしいとか、溜めてた食料を食べてしまったとか、ふさげて木の幹を揺らしてたら、木の上の方にいた鳥さんを怪我させてしまったとか。いろいろありますね。

案件によりますが、クルミとか綺麗な葉っぱとかの手土産を持って謝りにいけば、穏やかに解決することが多いんです。言葉も割と慎重に選んで喋ってますが。

ー謝るのって嫌じゃないですか?自分は全く関係ないのに。

そうですよね、その感覚が一般的だと思います。ただ僕は別に嫌じゃないです。むしろ、これで対価を貰えて暮らしていけるなら、こんな楽な仕事は無いと思っています。頑張ってないのになぜか褒められる経験は、誰にでもあるんじゃないでしょうか。僕にとってのそれが、謝ること、だったんです。

ーまさに天職なんですね。自分の得意を見つけるにはどうすればいいと思いますか?

頼まれたらとりあえずやってみる、ですかね。僕のきっかけも、「友人に頼まれてやったら喜ばれたこと」ですから。今までの僕を見てきた友人が、僕に出来そうだから頼んできてるわけで、その直感はだいたい当たってるんじゃないかなと思っています。少し逸れますが、だから友人のミチルには本当に感謝しています。

ーちなみにミチルさんは何をやらかしたんですか?

これ言っていいのかな(笑)すぐ近くに蜂たちが沢山暮らしてるんですが、蜂蜜をね、ちょっとだけ舐めちゃったんです。ほんのちょっとだけ。そしたらそこから毎日、蜂たちから総攻撃されるようになって。怖くて家から出られなくなって、僕に連絡したってわけですね。ミチルって、イノシシですよ。あの狂暴で有名なイノシシ。ほんと情けない話ですよね(笑)

ー小さい群れも油断できない…。イノシシでも大量の蜂には敵わないんですね。

まあそうですね(笑)自業自得です。でもそこが僕の稼ぎチャンスになっているので、悪いともなんとも言えないのがもどかしいですね…。トラブルは無いに越したことはない、でも起きてしまうのがトラブルです。

ー森も人間界も同じですね。最後に一言お願いいたします!

はい。僕は、楽して生きていたい怠惰なアライグマです。いまある状況で頑張れるなら頑張ればいい。でも、頑張れなかったから他を探しました。どんなに狭くても、頑張らないで出来ることってきっと誰にでもあると思います。

それでもし間違えて誰かに迷惑をかけてしまったら。そのときはぜび、僕を呼んでください。クルミと綺麗な葉っぱを持って、どんな場所にも駆けつけます。